最終更新日:2006. 6.15
■おことわり 一応、最初に断っておきますが、私はアーシングの効果はキッパリと否定しますが、D.I.Y. としてのアーシングは否定するつもりはありません。 やっても別に悪影響はないし、それで D.I.Y. を楽しめるのなら、結構な話だと思っています。 私も技術屋として、間違った事は何一つ書いてないと自負しておりますが、「あー勘違い」ってのはあるかも知れません(^^;)、おかしな記述があった場合には遠慮なくご指摘ください、ただし、「それは違う」「それはおかしい」って指摘は要りません、「ここは、このように違う」という客観的にみて納得できる事実をご提供ください。 なお、ここに記載した内容について、文句があるならば、必ず私のブログへ書いてください。 他のサイトには迷惑を掛けたくないので、他では一切相手にしません。 ・・・というか、そういう仁義をわきまえない人は、内容以前にどのみち相手にしませんけどね・・・(^^;) ■体感でアーシングに効果があった・・・なんて 申し訳ないけど、体感で判断して、「低速トルクが増した」とか「トルクの落ち込みが無くなった」などなどの主観に基づく判断は、すべて心の潜在力がもたらす「プラシーボ効果(偽薬効果)」と一刀両断させていただきます。 人間の感覚などどいう「いい加減」なものでは、アーシングの効果のような微妙な違いが判別できる訳がありません、断言します。 ウソだと思う方 ・アップダウンやトンネルのある道路、たとえば山間部の高速道路がいいですね、スピードメータを見ずに常に一定速度で走行できますか? ・また、一人乗車とフル乗車で、ゼロ−60km/hを同じ時間で加速できるでしょうか? ・後部座席にこっそり大人が隠れて一人乗っていたら、加速感で判断できますか? これらができる人が、感覚で判断した!! と言うのなら、半分くらい信用してもいいでしょう。(笑) やってみるまでもなく、「いやぁ、自信ないなぁ・・」って人は、体感だけでアーシングの効果に物申すのは止めておきましょうね。 説得力ゼロですからぁ。 あ、私は自信ありますよ、絶対にできないっていう自信が・・・ね。(笑) ■アーシングによる一次効果(何が変わるのか?) アーシングの説明で、「マイナスに溜まった電気を効率よくバッテリーに戻してやる」(某車雑誌)って書いてあったりしますが、読んでいて恥かしい。 その程度の知識で電気回路を語るから、ただでさえ怪しい信憑性がますます怪しくなるってもんです。 電気ってプラスからマイナスに流れる・・・ってのは便宜上の話で、電流ってのはマイナスの電荷を帯びた電子の流れですから、実際にはマイナス電子がマイナスからプラスへ向かって流れているんですよ。 それと、「溜まった電気」っていったい何よそれ、コンデンサとかバッテリーじゃないと電気を溜めることなんてできませんよ。 勘違いされては困るのですが、「鉄でできている車体をアースに使用しているノーマル状態に比べて、アーシングを施工すると、回路抵抗が少なくなる。」 というレベルの話は、言われなくても当り前の事実です、んな事は中学生でも知ってます。 アーシングによりまず何が変わるか・・・、回路抵抗は確かに多少は下がるでしょう。 しかし、それによって、エンジンのパワー(トルク)がアップする・・という事には、常識的に考えてどうしても結びつかないのです。 そもそも、今の車のスパークプラグには、ノイズ防止のために抵抗入りプラグが使われているんですよ、わざわざ直列に抵抗入れてスパークのエネルギーを小さくしているんです。 そんなんだったら、アーシングする前に、抵抗を取りましょうよ!、そっちの方がよっぽど効果的ではないですか? ■回路抵抗が下がる事による二次効果 まず、よく考えて欲しいのが、車はガソリンのエネルギーで走るという事、電気で走っているのはありません。 アーシングによってスパークが強くなっても、エンジンに与えられる入力は何も変らないのですから、出力も変るハズがありません。 入力と出力は常に等しい関係になければ、物理学の常識を根底から覆してしまいます。 ノーマルの状態で完全な燃焼が得られているのであれば、それ以上にスパークのエネルギーを与えてもガソリンの燃焼に対しては何も寄与しない事は容易に理解できると思います。 100のエネルギーで着火するのに、120のエネルギーを与えるというのは、別の言葉でムダといいます、覚えておきましょう。 ですから、もしアーシングに効果があるとすれば、「ノーマルの状態ではスパークが弱くて満足に着火できない状態だったものが、アーシングによって確実に着火するようになった」という事しか私には思いつきません。 もしアーシングでエンジンの性能が上がるなんて事が起きるとしたら、もともと不完全燃焼のサイクルが存在していたという事になります。 そんなんアーシング以前の問題ですよ。 他に点火角とか改善すべきところがあります。 これを検証するには、排ガス中の CO濃度でも測ってみればいいかも知れないですね、アーシング前と後で。 もしCOが下がっていたら、その分は完全燃焼したという事ですから、効果ありと判断していいですね。 ■コストダウンと回路設計 だいたい、そんな原価 数百円から千円程度でできるアースの強化くらいで、燃費がよくなったりトルクが上がったりするんなら、メーカーが最初からやってますって(^^;)、他社との競争でしのぎを削っている分野ですよ。 しかも、燃費がよくなる、不完全燃焼が減って排ガスがクリーンになるなんて言ったら、大変なことですよ。 場合によっては、リアウインドウに張ってあるシールの☆の数さえ増えかねませんって(^^;)、それどころかエネ庁や環境省から車のアースを強化して省エネ・排気ガスの清浄化に取り組むよう行政指導さえされかねないですよ。 そもそもマイナス回路にボディの鉄板を利用しているのは、コストダウンの為で、確かにその数百円をケチっているのは間違いないのですが、ただケチっているのではなく、マイナス回路をボディアースとする事で回路抵抗が多少増える事を前提に回路設計を行い、ボディアースで構成された回路でも着火するに十分なエネルギーを確保できるようにして、その代わりにマイナス回路を必要以上に布設せずにコストダウンを図っているのです。 つまりは、 マイナス回路を布設するために必要なコスト > イグニッションの電圧を上げるために必要なコスト なので、マイナス回路を必要以上に布設しないでコストダウンをしているのです。 いくらなんでも、性能を落としてまでコストは削減しません、そういうのはコストダウンとは言わず、パフォーマンスダウンなのですから・・・ アーシングにより回路抵抗が減ると、イグニッションコイルの2次電圧が上がり、スパークプラグにかかる電圧も上がると思われがちですが、実際にはスパーク電圧というのは、プラグの電極の間隙と混合気によって決ってしまいます。 通常は、電極の間には空気または混合気がありますが、この状態でスパークプラグの電圧をどんどん上げていくと、ある電圧に達すると電極間の絶縁が破壊されてスパークを起します。 この時の電圧を絶縁破壊電圧と言いますが、これ以上にはどうやっても電圧は上がりません。 すなわち、アーシングで回路の抵抗が低くなりイグニッションコイルの2次電圧が上がったとしても、スパークの電圧は全く変らないのです。 当然、空気中よりは混合気の方が絶縁破壊電圧が低くなりますが、スパークプラグは空気中でも十分にスパークするようにイグニッションコイルは余裕を見て設計されていますから、混合気中では余裕タップリという状態ですね。 アーシングして更に余裕を作っていったい何がしたいのサ。 アーシング信者がよく口にする、「ボディアースは抵抗が大きいので、電流が流れにくい」は、もともと織り込み済みなのです、その状態で十分なのですよ。 なので、アーシングなどしてスパークのエネルギーが大きくなったとしても、意味がないのです、さっき覚えてもらったムダという言葉を思い出してくださいね。 ついでにムダについてお話しておきますと、車の中で使う電気は、すべてガソリンによって賄われているのですが、当然ムダなスパークにより余計に電力を消費させると・・・、そうです燃費は悪くなるんだよなー。 エンジンルームとかガソリンタンクの中に必要のない照明点けて走ってるようなもんですよ(大爆)、もったいねー。 おばけ出るよぉ。 ■ライトの場合 エンジンと違い、電気のエネルギーがそのまま仕事量に結びつくという意味では、ライトくらいならちょっとは明るくなるかも知れませんが、前述の様にその状態で設計されているのです、ご存知のように車の電気はオルタネーターという3相交流発電機で発電され、レギュレーターという整流・電圧調整回路で直流の約12Vに調整されて出てきます、車のライトは12V規格です、そりゃ電圧を上げりゃ明るくなりますが、電球の寿命は電圧の2乗で短くなりますので、電圧を上げるのは両刃の剣といったところでしょう。 あ、ちなみにディスチャージランプは、バラスト(安定器)によって点灯させる高圧放電管で、安定した点灯状態を得るために、出力電圧のフィードバック制御を行っていますから、そもそもそんな事(安定器の一次側電圧の変化)では原理的に明るくなりませんからね、念のため・・・ ハロゲンの場合、ヘッドライトを点けた状態でエンジンを始動すると、バッテリーの電圧の低下でライトがかなり暗くなりますが、ディスチャージの場合は、明るさの変化はほとんど(全く?)ありませんから、ウソだと思ったら試してみてください。 それでもアーシングをしたら、明るくなるっていう人が居るんですから、信じるものは救われると言うか何というか・・・・(爆) ただし、アーシングをしたから明るくなるハズと強い信念を持って作業をすれば、ディスチャージだろうが、グローブボックスの中に置いてある懐中電灯だろうが、相当明るくなって感じることでしょう。(^^;) ■宣伝文句の真っ赤なウソ アーシングの効果として、信号待ちでファン等の大きな電装品が動いた時にライトが暗くならなくなる・・・、という宣伝文句がありますが、こんな理論的に明らかにウソになることを言うからダメなんですって。 一つの閉回路に流れる電流の大きさは、その回路の電気抵抗とバッテリの端子電圧で決ります(オルタの起電力の変化は無視します)。 ちなみに、バッテリの端子電圧は(バッテリの内部抵抗により)負荷電流の増加に比例して低下します。 信号待ち等でライトが暗くなるのは、考えるまでもなく負荷電流の増加により、バッテリの端子電圧が低下して起る現象ですが、アーシングをしたからと言って、この現象を抑制することにはなりません、アーシングに効果があるとすれば負荷電流が増えてしまうので、逆にバッテリの端子電圧が余分に下がるため、抑制どころか助長することになるのです。 もちろん、アーシングによって、バッテリの寿命が長くなるだなんてふざけた話は、詐欺同然ですよ。 だいたい、アーシングなんて、言い方が気に入らない・・・、電気的にアースを取る事を英語ではグラウンディング(grounding)ですね、バカな奴が広めた和製英語ですね、恥かしい・・・。 そもそも、アースとは大地に接地する意味です、車の場合マイナスアースと言いますが、残念ながらどこも接地などはされていませんしね。 こういう場合、マイナス側を電気的に同電位に接合する・・・という意味で、本来はボンディングと言います。 まあ、ここは通称という事で百歩譲ってアーシングでいいでしょう。 パチンコ屋さんのスロットマシンでも、何気にスロットルって言い方が広まってしまって、今じゃスロットルって言うのが当り前みたいになっちゃってるし、それと同じようなもんかな。 でも恥ずかしいよね。 ■ケーブルによる抵抗の違い 大体、ケーブルの芯線は細い方がいい!なんて実しやかに謳われていますが、細い方がいいのは、取りまわしが楽な事以外には何のメリットもありません。 細いと、圧着部での素線切れや熱や腐食による減肉で、どんどん電気抵抗が増えていきます。 そもそも 8sqのケーブルで比較した場合 1.2mm 7本撚りの IVケーブルと、0.45mm 50本撚りのKIVケーブルでは、それぞれ 1kmあたりの直流抵抗は 2.31Ωと2.32Ωで、芯線の太い7本撚りの方が抵抗が低い事が JIS にも明記されています。 ちなみに、KIVには錫メッキの芯線のものもありますが、メッキ線は抵抗が高くなります。 ま、それにしても、1kmで 2.31Ωなんて言ったら 1mあたり 0.00231Ωっすよ、ちなみに純正オーディオの電源なんかの 1.25sqのAVケーブルでは、1mあたり 0.0155Ωです。 仮に 10A流れたとしても(オーディオに10Aも流れたら大変ですが)電圧降下は、たったの 0.155V・・・、どっちにしても、この程度の抵抗や電圧降下なんて、誤差の域をでません。 ちなみに、○○sq ってのは、電気屋さんは"スケ"とか"スケア"って読みます、いわゆる、公称断面積の事で平方ミリメートルと同じ意味と思っていいでしょう。 平方ミリメートル ⇒ square mm ⇒ スケア ⇒ sq って事です。 ■ECUリセットの落とし穴 最近の車のECU(エンジン周りをコントロールするコンピューター)は、燃料消費率を少なく・・いわゆる低燃費となるように、その車のクセ・使われる環境・使い方を学習し、燃調マップと呼ばれる空燃比(空気と燃料の比率ですから、空燃費ではないですよ、よく間違えるバカがいますが・・・)の設定を補正しています。 アーシングを施工する際に、普通はバッテリーのマイナス端子を外しますよね?、するとECUは初期状態にリセットされてしまいます。 これは多くの場合、パワーが上がって・燃費が落ちる事を意味します。 これを、アーシングしたらパワー・トルクが上がったと勘違いさせる一つの要因とは考えられませんか? 以前に、某車雑誌でいろんな車にアーシングをして、施工前後のパワー・トルクの違いを測定する特集をやっていましたが、あの特集ではシャーシダイナモ使って測定しているので、アップしたというデータについて否定はしません。 しかし、燃料消費量の測定をしてないので、トルク・パワーが上がったという事実はあっても、それがアーシングの成果とは断言できません。 なぜならば、トルク・パワーが上がった分、燃料を多く消費している可能性を否定できないからです。 あそこまでやるんなら燃料消費量も測定して欲しいですよねぇ、でなければ、アーシング前のデーターもECUをリセットしてから測定するとか・・・、公平にやって欲しいものです。 その雑誌の記事を見ると、車によって低回転域で効果があったとされる場合と、高回転域で効果があったとされる場合など、効果の出方にもバラツキがあるようですが、アーシングの効果が、スパークが強くなる事に起因するのであれば、こんなバラツキは出るはずもなく、これこそECUリセットにより燃調が濃くなった結果を如実に物語っていると言えます。 まあ、確信犯だと思って見ましたけどね、私は・・・ ECUをリセットすると、燃調マップがクリアされるので、燃調が初期状態となり空燃比が濃くなるというのは、数多くのHPでも書いてあり、よく知られた話です。 ECUで燃調を行っている以上 「アクセル開度=燃料消費量」 ではないという事は認識しておかなければなりません、常識的には 「トルク=燃焼消費量」 と理解しておいた方がよいでしょう。 アーシングをした人がよく、「トルクは上がったような気がするけど、燃費は変らない」っておっしゃいますが、これは「実際にはトルクは上がっていない」もしくは、「トルクは上がったけど、燃料消費量も上がっている」のどちらかでしょう。 燃料消費量が同じにもかかわらず、トルクが上がった場合、以前よりも荒い運転をしない限り燃費は絶対によくなります。 仮に以前と同じアクセルワークをしてトルクアップを堪能(^^;)していたとしても、トルクが上がっていればその分加速がよくなるのですから、目的の速度に到達するのが早くなりますし、巡航時のアクセル開度も少なくなるので、燃費がよくならない訳がないですよね。 もちろん、トルクアップした分アクセルワークを抑えたとすれば、言うまでもありませんよね。 そして、必ずでてくる言い訳が、「トルクがアップした分、気持ちよくアクセルを踏んでしまうから燃費には効果がない・・・」んだとさ(^^;)、かなり専門的にアーシングを扱っているサイト様でも、燃費が変らない・・・そして行き着く先は、残念ながらこの言い訳になるんですよね、もうちょっと説得力のある言い訳を聞かせてほしいもんです。 私は「トルクが変らないから燃費も変らない!」、こんくらいスッキリした解を求めます。(笑) ■あーもう面倒くさい(^^;) まとまってないけどまとめ! 電気ってのは、オカルトじゃないんですから、完璧に理論で説明がつく分野なんですね。 特に、電気抵抗などという電気でも基本中の基本の部分は、すでに枯れた技術の分野、今更理屈を覆すような大発見などあるはずもないのです。 私なんて、毎日車乗ってても、昨日と今日と同じトルクか?って言われたら全く自信ないです、その日の気分で全然違って感じますもん。 そこにアーシングしたからトルク上がってるかなぁ・・なんて思いながら運転したら、そりゃぁもの凄い効果が期待できるってもんです。(^^;) 少なくとも、人間の感覚などと言う「いい加減」なものでは、物理学の常識を超える事はできないのです。 試しに、アーシングをモーターブレーカーとか使って、運転席から繋いだり切ったりできるようにして走りながら切り変えてみても面白いかも知れませんね。 さー、今どっちだ?なんて・・、利き酒ならぬ、利きアーシングなんてね。 |
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