初期型D4エンジンの省燃費走行のコツ

作成日:2006. 6.19
最終更新日:2006. 8.22



【燃料カットを積極的に使おう!】


 アクセルオフでの走行中は、ガソリン噴射はストップしています。 つまり、エンジンブレーキを掛けている時は、ガソリンを消費していないという事です。
 正確には、エンジンが暖まった状態で、エンジン回転数が約 1,000回転以上、かつアクセルオフの条件で、燃料カットとなります。
 省燃費走行のためには、まずはこのガソリン噴射カットを積極的に使って走行しましょう、なにしろこの条件を満たす時はどれだけ走行してもガソリンは要らないのですから・・・

 また、エンジンブレーキを使ってフットブレーキを踏まないという事も、省燃費走行には大きな意味があります。
 ブレーキを踏むという事は、せっかくガソリンを燃やして車に与えた速度エネルギーを、ブレーキで摩擦熱に変えて空気中に捨ててしまうという事です。
 燃料カットで走行できるエンジンブレーキを使うのとどちらが得か、考えるまでもないですね。

 具体的に、どのような運転をすればいいかと言うと、

1.なるべくフットブレーキは使わないで、エンジンブレーキで減速する。
 そーんな事言ったって、信号が赤になったらブレーキ踏まなきゃいけないし、前の車が減速したら自分もブレーキ踏まなきゃいけないでしょ・・・、って思ったアナタ、大正解です、その通りなんです。
 「信号が赤になった」「前の車が減速した」、この時にブレーキを踏まなくても済むように心がけて走行すればいいんです。
 信号の変わり目を予測して、赤に変わりそうな場合はエンジンブレーキで減速したり、逆に多少加速してやり過ごしたり・・・、通勤などで毎日通る幹線道路などでは、信号の連動のパターンを頭に叩き込んでおけば、赤信号でブレーキを踏んで減速する頻度が少なくなるハズです。
 目の前の信号が赤なのに、まだアクセルを踏んで加速していく車を見ると、ある意味うらやましく感じます。(笑)

2.車間距離はたっぷりと取る。
 幹線道路でスムーズに流れているような時、前を走行する車のブレーキランプが点いても、単なる一時的な減速ですぐにまたもとの速度に戻る場合が意外に多いと思います。
 このような場合にブレーキを踏まなくてもいいように、たっぷりと車間距離を取りましょう。 前の車のブレーキに合わせて自分もブレーキを踏まなければならないようでは、車間距離が短すぎます。
 私の経験では、車間距離を普段の2倍から3倍取ってやることで、前の車の一時的なブレーキでも、自分はアクセルオフだけで十分に対応できます。
 マイペースでゆっくり走っている車にピッタリくっついて煽るなんて、危険なだけならまだしも、燃料の無駄使い(笑)です。
 私の経験上、一車線の道路で前に遅い車がいたら、一度車間を詰めれば、譲ってくれる車は即座に譲ってくれます。 それに対し、車間を詰めても知らん顔してる車は、どれだけ詰めても絶対に譲ってくれませんから、詰めるだけ無駄です。 おおらかな気持でたっぷり車間を取って省燃費運転しましょう。

3.下り坂ではアクセルから足を離す。
 下り坂と言っても、オーバードライブを外してエンジンブレーキを掛けたり、フットブレーキを踏まなければ加速してしまう急な下り坂もあれば、アクセルをちょこっと踏んでやらないと速度がどんどん落ちてしまう緩い坂もあります。
 前述の急な坂でアクセルを踏む人は居ないと思いますが、問題は緩い下り坂です。
 アクセルを微妙に開けたままで速度を調整して下り坂を走行している人はいませんか?、すぐにでもこの走り方は止めましょう。
 基本的にはアクセルをオフのまま走行、速度が落ちてきて後続の車の邪魔になりそうになったら、制限速度+αまでサッと加速して、またアクセルオフにする・・・の繰り返しで走行しましょう。



【質のよいガソリンを使おう!】

 ハイオクを入れましょうって話ではありません、一口にレギュラーガソリンと言っても、品質は様々です。
 ガソリンは、原油を精製して作られる、いわゆる炭化水素化合物の集まりです。 メタン・エタン・プロパン・ブタン等の飽和炭化水素を始めとして、200種類以上もの化合物の集合体で、揮発性の高いものから低いものまで様々です。
 一定の品質にして出荷されますが、バラツキがありますし、製造してから実際に車に給油されるまでの期間の違いで、組成も変わってきます。

 そこで、給油する際には、どこのブランドのどの給油所で給油したかを記録しておき、燃費の比較をしながら品質の良し悪しを判断するのです。
 しばらく記録を取ってみると、なんとなくあそこの給油所はダメだとか、ここはいい!だとかが判ってくるはずです。
 一般的には、周辺の他の店舗よりも極端に安売りで客を集めているところは、いかにも怪しげな無印のタンクローリーが出入りしていて、どんなガソリンが入っているかわかったもんではないですね。



【必要以上の暖気をしない!】

 エンジンを掛けてから走り始めるまでにどれくらい暖気運転をしますか? 人によっては水温のランプが消えるまで・・とか、全くしない・・とか様々です。
 エンジンを壊してしまっては元も子もないですが、暖気の間に消費したガソリンは、無駄になりますので、できるだけ暖気運転は短い方がいと思います。
 私の個人的な意見ですが、夏でも冬でも30秒も暖気すれば十分だと思います。 ちなみに私は、ほとんどしない人です。



【信号待ちでは、ニュートラルへ!】

 信号待ちでのATのシフトは”ドライブ”のままがいいか、”ニュートラル”にするのがいいか???
 これは、よく話題になりますが、”ドライブ”のままだと回転数が落ちるので、その分ガソリン消費量が少なくなる・・・、よって”ドライブ”のままの方がオトク。 これが正解だと、思っていました。

 確かに、普通のエンジンの場合は、そうかも知れません。
 しかし、電子スロットルのエンジンの場合、”ドライブ”で回転数が落ちると、元の回転数に戻そうとしてスロットルが開かれるので、この理論は当てはまりません。

 実際に、多機能モニタで”ドライブ”と”ニュートラル”のインジェクタ開弁時間を見てみると、”ドライブ”の時は”ニュートラル”の時の2割ほど多い燃料を消費していることがわかります。
 ただし、信号待ちでいちいち”ニュートラル”にしていると、慣れるまでは信号が青になって慌てて発進しようとして、空ぶかしをしてしまって逆効果・・・という事がよくありますし、トランスミッションに対しては、切り替えない方が耐久性の面ではメリットがありますから、難しいところだと思います。



【エアコンはできるだけ使用しない!】

 エアコンって言うと、いったい何のことを指すのか、解釈が微妙だったりするので、まずはエアコンの定義から。
 通常、エアコンって言うと、「エアーコンディショナー」ですから「空調装置」全体を指します。

 しかし、車の空調の場合長い歴史の中で、「エアコン」=「クーラー」という図式が出来上がってしまっています。
 コンプレッサのスイッチに、”AC”とか”A/C”って書いてあるので、ついつい”エアコン”って呼んでしまうのですが、あくまでもこのスイッチはコンプレッサを使って空調するか、使わない空調するかの選択スイッチなのです。

 ちょっとクドくなってしまいましたが、本来とは意味が違うのですが、ここでは”AC”のスイッチを入れる事をエアコンを使用する・・・と定義します。

 普通は、エアコンを使うのは、夏場の車内が暑い時か、湿度が高くフロントガラスが内側から曇ってしまう時の曇り取りの2つのケースだと思います。
 ところが、ネットの掲示板などを見ていると、たまーに一年中エアコン入れっ放しって人がいます。
 やってみればすぐに判りそうなもんですが、エアコンを入れておかないと暖房もできないと思ってる人も居られるようです。

 エアコンを入れっ放しだと、どのくらい燃費が悪くなるか・・・は、季節や車の走行条件などで変わりますので、一概にはいえませんが、1割から2割は違うのではないかと思います。



【電装品はなるべく使わない!】

 車の中で使う電気は、すべてガソリンで賄われています。

 一時的にバッテリーから供給したとしても、結局はオルタネータというエンジンに繋がった発電機が受け持つことになります。
 一般家庭で使う電力は、通常 1kWhあたり30円程度ですが、車で使う場合にはそれよりも安い事は有り得ません。



【D4エンジンの特性を知ろう!】
 D4エンジンとは、燃費改善のために希薄燃焼を行うことを目的に開発された”ガソリン筒内直接噴射エンジン”です。
 希薄燃焼で燃費を良くする・・・とはどういう事なのでしょうか。
 大雑把に言うと、ディーゼルエンジンの燃費がよい特性を応用したガソリンエンジンという事になります。

 では、なぜディーゼルエンジンって燃費がいいのでしょうか?  決して軽油の方が燃料として能力が高いからではありません。
 一言で言ってしまうと、ディーゼルエンジンは吸気を絞らないので、ポンピングロスが少なくなり、燃費がいいという事になります。
 エンジンが空気を吸い込むのは、自然吸気というくらいですから、シリンダ内で爆発してエンジンが回転する力を利用して他の気筒が勝手に空気を吸い込むのですが、これは注射器を思い浮かべてもらえばいいと思います。 注射器を引っ張って空気を吸い込む時に、空気の通路が狭い針がある場合と無い場合では、針がついている方が余計な力が必要になりますよね。 この余計な力がポンピングロスです。

 なぜディーゼルエンジンは吸気を絞らないのに、ガソリンエンジンでは吸気を絞らなければならないのでしょうか?
 空気と燃料の混合比率を空燃比といいますが、軽油とガソリンを比較すると、燃焼できる空燃比の範囲が全く違います。
 ガソリンが完全燃焼するのに必要な酸素量を確保し多少酸素が余る状態を「理論空燃比」といい、およそ 1:15 の比率になります。 ガソリンの場合は、この範囲を大きく外れると燃焼できなくなってしまうのに対し、軽油は広い範囲で燃焼することができるのです。
 D4ではない、普通のガソリンエンジンの場合は、アクセルを操作するとスロットルという空気の絞り弁が動いてエンジンに吸い込まれる空気の量が変わり、その空気の量に合わせて適正な量のガソリンを噴射する・・・という方式で適正な空燃比を維持するようになっています。
 それに対しディーゼルエンジンの場合は、空燃比をコントロールする必要がないことから空気を絞る機構がなく、アクセルは燃料の量を直接変えているのです。 つまり、ガソリンエンジンでは、燃焼が可能な範囲に空燃比をコントロールするために吸気を絞らなければならないという宿命があり、吸気を絞るとポンピングロスにより、効率が悪化するという訳です。
 そこで、ガソリンエンジンでも、ディーゼルと同じようにポンピングロスを減らす方法がないものか・・・と考えられたのが、何を隠そうD4エンジンです。
 D4エンジンでは、通常の理論空燃比燃焼をベースに、それよりも多い空気量で燃焼させる「希薄燃焼」さらに多い空気量で燃焼させる「超希薄燃焼」という3つのモードを持っています。
 希薄燃焼超希薄燃焼というのは、普通よりも多い空気を吸わせてポンピングロスを減らし、ロスが減った分だけガソリンも減らしてやろうというモードで、最初空気だけを吸わせておいて、圧縮工程の前や後にシリンダ内に直接ガソリンを噴射して、しかもガソリンの流れをコントロールして点火プラグの回りにガソリンの濃い層を集中させることにより、普通では燃えないような薄い空燃比でも安定して燃えるようにしているのです。

 ところが、この希薄燃焼超希薄燃焼モードでは、大量のガソリンを噴射することができないので、一定速度で巡航しているような場合にしか使えませんから、アクセル開度や速度などによりコンピューターが燃焼モードを制御し切り替えています。
 理論空燃比燃焼は、スタートから巡航速度に達するまでの間とか、加速時や登り坂、あとは高速走行時くらいしか使いませんので、巡航時には希薄燃焼超希薄燃焼のどちらかになっている事が多いと思います。
 問題なのは、希薄燃焼超希薄燃焼とでは、意外と燃費に差があるのです。 明確なデータで示すことはできませんが、仮に高速道路を一定速度で走行する場合、希薄燃焼超希薄燃焼で、燃費に2割以上の違いがあると思います。 無理に数字を出すとすれば、それぞれ 12km/リットル と 15km/リットル以上 ってところですかね。

 通常、60km/hで巡航しているような場合を想定すると、超希薄燃焼に入っている事が多いのですが、ちょっとしたアクセル操作のムラや道路のアップダウンで、すぐに希薄燃焼になってしまいます。 このような場合に、そのままではなかなか超希薄燃焼に戻らないことがよくあるのですが、一旦アクセルをオフにして、踏み直すだけで超希薄燃焼に入ります。
 なぜ、こんなことが起きるかというと、アクセルの操作量に対するモードの遷移ポイントにヒステリシスがあるからだと思われます。

 どういう事かというと、この図を見てください。 アクセルを踏み込む方向に操作した場合に超希薄燃焼から希薄燃焼に遷移するポイントと、逆にアクセルを戻す方向に操作した場合に希薄燃焼から超希薄燃焼に遷移するポイントにズレが生じています。 これをヒステリシスと呼びます。
 もしヒステリシスが無く踏み込む方向と戻す方向が同じラインで動作したとすると、遷移点ギリギリのアクセル開度の場合、モードが定まらず行ったり来たりしてしまうことになり、これではエンジンが安定して動作できなくなるため、わざわざヒステリシスを持たせてあるのだと思われます。

 問題なのは、停止状態から加速して、巡航速度に到達した状態では、ほとんどがこの超希薄燃焼希薄燃焼の狭間のポイントに来てしまう・・・という事です。

 残念ながら、インパネについているECOランプは、希薄燃焼超希薄燃焼のどちらでも点灯するようで、実際にこのどちらのモードになっているかは、人間の5感だけで判断することはできません。
 加速して巡航に入り、ECOランプが点灯しているからOKと判断すると、実は希薄燃焼モードになっている・・・という事が非常に多いのです。

 また、平坦な高速道路を走行する場合、大体95km/h付近まで超希薄燃焼を維持できます(AZR65Gの場合)が、それ以上では無理ですし、見た目平坦だと思っても非常に緩やかな登り勾配だったりすると、90km/hが限界だったりもします。
 このように、希薄燃焼超希薄燃焼のモードの判別ができるのとできないのでは、燃費に大きな違いがでてきます。

 希薄燃焼超希薄燃焼のモードを判別するには、インジェクタの噴射時期と時間を見るか、スロットルの開度などのコントロール信号を見てやれば、制御の違いを知ることができます。 または、制御した結果のプロセス値として、インマニの圧力か排ガスの酸素濃度を見てやればいいと思います。
 私は、多機能モニタを使って、排ガスの酸素濃度をモニタして判断しています。

 実際の私のVOXY(Z−G 4WD)の購入時からの燃費のデータを載せますが、基本的に購入時から現在に至るまで、徐々に燃費がよくなってきています。
 タイヤが減ることにより、徐々に見かけ上燃費がよくなってくるという話はよくありますが、このグラフは、タイヤの外径寸法による誤差を補正してあります。
 燃費が向上してきた要因としては、基本的には、前述のアクセルオフの使い方が少しづつ上手くなっていった事が大きいと思います。
 途中から転勤により、高速道路走行の割合が増えて燃費が格段に良くなりましたが、これは多機能モニタで正確に燃焼モードを知る事ができるようになって、90km/hでしか走行しなくなった事や、超希薄燃焼に入っていない状態の時に悪あがきをするようになった事の成果がでているのだと思います。
 モードの判別ができずに、ECOランプ点いてるからいいや・・・と、だらだらと95km/h程度で高速道路を走行していたのでは、下手すると一般道路よりも燃費が悪化していたのではないかと思います。


 最後に一言、エコドライブに徹して、燃費に一喜一憂するのもいいですが、くれぐれも”エコ”ドライブが”エゴ”ドライブにならないようにしないと、何のためのマイカーなのか、何のための快適装備なのか、わからなくなってしまいます。
 気持よく加速を味わったり、快適なドライブを楽しむことも必要ですよ。(笑)